コーディネーショントレーニング ~楽しく運動神経を向上させるために~

さて今日は、学校体育にも取り入られはじめている「コーディネーショントレーニング」についてのお話しです。
「コーディネーショントレーニング」は、1970年代に旧東ドイツのスポーツ運動科学者によって考案され、欧米では以前からトップアスリートの養成に利用されてきました。
スポーツや運動を行うときは、空間認知、リズム、バランス、反応などの要素が複雑に組み合わさっていますが、その調整する能力を高めるためのトレーニングが「コーディネーショントレーニング」です。この能力を高めることで、運動神経が向上するとされています。
スポーツ選手の動きを見て「センスがいい」「身のこなしが軽い」「状況判断が優れている」などと表現することがあります。それは「コーディネーション能力が高い」ということになります。
このトレーニングは、今はアスリートだけではなく、高齢者、障害者、幼児の運動指導にも活用されています。
コーディネーションの7つの能力とトレーニングの内容

「コーディネーション能力」には・・・
- リズム能力
- バランス能力
- 変換能力(状況の変化に合わせて動きを切り替える)
- 反応能力(合図に反応し、適切に対処する)
- 連結能力(身体を無駄なくスムースに動かす)
- 定位能力(自分と他の位置関係を把握する)
- 識別能力(手足、運動に使う道具を上手に操作する)
これらの7つがあります。
これらは運動神経の発達を促し、スポーツ全般の運動能力に大きくかかわるだけでなく、音楽やダンス、さらにコミュニケーション力や学習能力にも関連しています。
誰でも楽しく汗をかいて取り組むことができ、それでいて、運動能力やスポーツパフォーマンスの向上が期待できるのが、このトレーニングの特徴です。
たとえば「リズム」では、ダンスはもちろんですが、グーグーパーパーのように、両足を揃えてジャンプしたり、リズムを口で刻みながら手を叩いたりします。また「バランス」では、一本足で立つ「かかし」や「飛行機」の姿勢になったり、床でV字バランスをとったりします。
一人で行うものから、皆で行うものまで。小学校の体育授業では、体ほぐし運動のメニューとして。そして、保育園や家庭では、親子で一緒に楽しんで行えるものとして。方法、目的、内容に応じてさまざまな運動をすることができます。
普段の生活にも生かしながら

トレーニングは、いろいろな要素を組み合わせながら、短時間で多くの種類を行います。
たとえば「あの電柱まで走ってから、緑と黄のカラーコーンの間を蛇行しながら戻ってきて」と指示した場合、「反応能力」「連結能力」と、電柱や色を把握する「識別能力」を同時に使うことになります。
川遊びや森遊び、外遊びなどをしながら、自然と身体のさまざまな能力をフル活用していた昔と違い、外での遊びに制限が多い現代では、こうしたプログラムでトレーニングすることが、ますます重要になっています。
このように考えると、コーディネーショントレーニングは、運動のためばかりではなく、普段の生活や仕事にも生きてくることが分かると思います。
神経系統が発達する12歳までに多種多様な運動を

「スキャモンの発達・発育曲線理論」(アメリカの医学者・人類学者のリチャード・スキャモンが発表)によると、神経系統は5歳頃までに80%の成長を遂げ、12歳でほぼ100%になるそうです。
さまざまな神経回路が形成されていくこの時期、遊びを含めて多種多様な動き・運動を行うことは、将来、スポーツの技能を高めるために重要なことなのです。
欧米の多くのトップアスリートが、この時期にさまざまな遊びや運動を体験しており、ベースボールとアメフト両方のプロとして活躍している選手や、夏冬両方でオリンピックに出ている選手などのスーパーアスリートが出現しています。
アスリートになりたいお子さんはもちろんのこと、そうでないお子さんも、コーディネーショントレーニングの要素を取り入れた運動や外遊びを、12歳までの間にたくさんして、運動神経を向上させていきましょう。
それが将来の身体づくりにつながっていきますよ。




