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【前編】発達が気になるお子さま向けの体操プログラム
2018年11月29日 8:21 PM カテゴリー: 【コラム】Stars Smiley Spirits
こんにちは、Stars Smiley代表の村田綾子です。
Stars Smileyでは、スポーツの家庭教師とたまプラーザ教室でのレッスンの中で、発達障害(自閉症スペクトラム、ADHD≪注意欠陥・多動性障害≫など)やその傾向のあるお子さま、発達がゆっくりなお子さま向けの体操教室を開いています。
前編・後編の2回に分けて、このプログラムの内容や、発達障害のあるお子さまと20年近くかかわり続けてきた私自身の思い、今後目指したいことなどを、お話ししようと思います。発達障害とスポーツ
私がスポーツの家庭教師として自閉症スペクトラム(当時は「自閉症」)のお子さまと初めてかかわったのは、体育大学に在籍中、今から20年前のことです。
自閉症スペクトラムに対する知識もなにもなく、6年生の男の子にかけっこを教えました。
社会的にも、発達障害への理解があまりない時期で、インターネットも未発達。情報量が極端に少なかった時代でした。
初めてのかけっこ教室は、一時間生徒さんを追いかけまわして終わり、という情けないものになってしまいました。ところが、それが彼には楽しかったようで、お子さまのよい反応を見て、お母さまから「またお願いします」と言われました。
勉強しないと・・・。
痛切に感じた私は、図書館に通っていろんな関連本を読みました。勉強とかかわりを並行して、自閉症スペクトラムそのもの、そして、自閉症スペクトラムの人の特性を理解すると、かかわり方の楽しさや一緒にスポーツをする面白さも分かってきました。
スポーツを教えていると結果を求めがちになり、つい厳しく指導してしまったり、その競技を極めさせたいと思ってしまうところがあります。
でもその後、自閉症スペクトラムをはじめ、発達障害や発達のゆっくりないろいろなお子さまとかかわり、専門家や親御さん方と話をするうち、「この子たちは、できるようになりたいのではなく、楽しく運動することが大事」だと気づかされました。
生涯、スポーツと楽しくかかわりたい、運動習慣が続くようにしていきたい。それが、生徒さんたちと、親御さんの願いだったのです。
これまでの歩み
スポーツの家庭教師で、市や団体から依頼があると、そこに行って運動を教えました。小学校の支援級の生徒さんのグループで、「ダンスをやりたいので、放課後に教えてほしい」という内容もありました。
たまプラーザのスマイリーハウスでレッスンがはじまったのは、今から5年前のこと。
自治体の子育て支援センターで、発達障害のあるお子さまのための親子体操教室を開いていましたが、自治体の都合で自主サークルにしてほしいと言われたのです。それでは親御さんの負担が大きくなって続けられないということで、スマイリーハウスに場を移すことになりました。
一人一人の生徒さんに対して、さまざまな配慮やサポートが必要なので、専門家の先生を呼んだり、スタッフが互いに情報を共有し合っての勉強は欠かせません。一人一人の特性に配慮しながら
基本的には「それなりの運動量」をこなしながら「楽しく過ごす」ことを大事にしています。
自閉症スペクトラムの特性として、その日になって、その種目をやりたくなくなってしまうこともあります。そんなときは、「分かった。じゃあ、今日はここまではやろう。その後は、別の種目をやろうか」と提案したりします。「腹八分目」くらいでやめるのがちょうどよく達成感を得られ、「またやりたい」につながってくるようです。
発達障害(自閉症スペクトラムを含む)と一言で言っても、人によってその特性はさまざまです。言葉で自分を表現するのが苦手なお子さま、おしゃべりが大好きなお子さま、飛び跳ねたり体を動かすのが好きなお子さま。
体操教室に来るような生徒さんは、基本的に体を動かすのが好きなので、教室にあるトランポリンや走ることで、まず気持ちを落ち着かせることがあります。
また、鏡やキラキラしたもので集中力がなくなったり不快になる生徒さんも多いので、鏡を覆ったり、キラキラしたものや、体操に関係のない余計な物は教室から除きます。そのほか、数字や文字にこだわりがあって、そういうものがあるとすぐ傍に見に行ってしまう生徒さんの場合は、レッスンに集中するためにカレンダーやスケジュール表を外したり覆ったりして、見えないようにします。
それぞれの生徒さんに配慮しながら、落ち着く方法を模索していくのです。
また、レッスンの流れを説明するときには、「これをやって、あれをやって」と口で流すように話すのではなく、ホワイトボードに書きながら、「まず、これをやります。次に、これをやります。そして、これをやって終わりです」と、「終わり」を見えるようにして明確に説明します。終わったものから消していくと、今なにをやっているのかを理解しやすくなるのです。
時間を気にして、少しでも遅れると落ち着かなくなってしまう生徒さんには、はじまりが1分遅れそうな時には「1分遅く始まったので、終わりは、5時1分です」というように、きちんと伝えると、納得して集中することができます。
自閉症スペクトラムのお子さまは、急激な予定の変化を嫌がる特性がありますから、やる内容が変わってしまった場合には、やる前に「時間がなくなったら、これはやりません」と先に説明しておくことで、パニックになるのを防ぐことができます。
- 当日のスケジュールは、目で見て分かるように、簡潔に説明する
- 急な予定変更はしない
- 遅れそうな時、変更しなければならない時は、事前にきちんと伝えておく
このような点を心がけてレッスンを行っています。
人が複数いるのが苦手で集中できなかったり、他の生徒さんに手を出してしまうような場合には、スポーツの家庭教師など、マンツーマンの指導を勧めたりもしています。
このように、下準備をしっかりし、一人一人の様子をよく見ながらかかわることで、集中してレッスンすることができるのです。
次回の後編では、具体的な体操の内容、このレッスンへの私自身の思いをお伝えします。
★★★「Stars Smiley Spirits」バックナンバーも、ぜひご覧ください★★★
★1 かけっこの基本とは!? Stars Smiley流かけっこ教室のポイント。
★2 スキンシップの重要性。運動習慣は、生まれたときから。
★3 ボールひとつで無限大! 乳児期からはじめられる「家庭でできる運動あそび」のススメ!
★4 運動能力は、遺伝ではありません。
★5 はだしで遊ぼう! 五感の刺激で創造性豊かに。
日本女子体育大学卒業大学卒業後、テーマパークでシンガー・ダンサーで活躍。未就園児の親子体操「ベビーチア」発案。日本チアダンス協会インストラクター、USAチアダンス協会インストラクター3級、幼児体育協会インストラター、新浦安RAINBOW SMILEY、幕張インターナショナル、スクール「Dolphins」、たまプラーザStars Smiley、恵比寿Stars Smiley、デイレクター兼チーフインストラクター 現在、チアダンス・ベビーチア、幼児体操、障がい児体操、スポーツの家庭教師、インストラクターとして活動。